心中における村田君の述懐(2)

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心中における村田君の述懐(2)

女性はもちろん、一切交友関係を(どころかあらゆる人間関係をも?)持たない俺であっても、このカナを見てまず尋常な女の子とは思えない。なぜこうなったのか知れないが、方やの俺の孤独癖といい勝負である。しかしこうして見るとこのカナやら俺やらの悪癖を、それぞれが矯正するために、この丹沢行は(ひょとして神から?)与えられたものなのかも知れない。だから云えることは、畢竟、誰もが「自らを越えて」行く必要がある、ということなのだろう。ただしかし、その過程に於ては悪魔もまた必ず介入して来るのに違いないのだ。なぜなら(人間それぞれに憑いている)悪魔がそう安々とおのれの餌食を離しはしないだろうと思えるからである(我が心中に巣食う黒い霧を思えばそれが容易にわかる)。さても、であるから、大伴さんの親和への道行きは斯くも困難であることだ(バカヤロ、他人事のように云うなよな。まったく!)…。 さて、俺の心中の述懐に文面を使い過ぎた。話を戻す。男は、呼び止められてはかなわない、あるいは俺たちに追いつかれてはかなわないとばかりに早足で沢を上って行く。その背を見送ったあとでふーっと大きく溜息を吐いてから大伴さんが「まったく、とんだ邪魔が入ってしまったわね。ふふふ、仕方ないわね。ところで御免な、カナ。大声を出したりしてさ」とあやまってみせる。それへ激情をもって返すだろうカナの性癖を慮ってミカが腕をおさえながら「カナ…」と泣きそうな表情で懇願をするようだ。
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