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2.”髭”
男は、町では”髭”と呼ばれていた。
体格の良い身体、後ろに縛った黒髪の長髪、太い眉、褐色の瞳、そしてもみあげから顎にかけて豊かな髭を生やしていた。男は名前を名乗らない為もあり、それで仮に”髭”と呼ばれていた。
”髭”は、エインの森の麓の村はずれに棲む、狩人だった。
日が傾いていた。
その日、”髭”は町で肉や皮を売り、それで狩りに必要な物を買って帰ってくる所だった。途中、行き倒れている子供を見つけた。遠目からでも、子供は、まだ小さく、着ている服はボロボロで汚れているのが分かった。歩き詰めたのだろうか。
この道に人は滅多に来ない。隣町に行くなら、もっと幅が広く歩きやすい街道を行く。この道の先は、”髭”や、獣の棲む森しか無い。
”髭”は、何事も無かった様に歩き、子供の傍を通り過ぎた。
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