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現代を生きる忍者たちにはデジタルの知識が必須である。しかし、その習得は簡単ではない。忍術や忍法に詳しくとも、IT技術となると、そうはいかないのだ。そこで誰か詳しい人間から教えてもらおうという話になった。
忍者の中にも早くからデジタル化に前向きだった人や趣味でITに親しんでいた者が幾らかいて、そういった人間から講師を選ぼうという方向性は定まった。しかし、その人選が、これまた面倒だった。
忍者は四つの団体に分かれている。どの組織の忍者を講師に招くか、という点で意見が別れたのだ。
それは、忍者たちが元々、一枚岩ではないことに原因がある。
かつて、この国で忍者たちによる大きな戦いがあった。
生き残ったのは甲賀、伊賀、風魔、雑賀の4つのクラン(里)である。
4つのクランは平和協定を結んでおり、争うことは今はない。
だが、ほんの些細なことで論争が起こり、対立が起こるのも事実だった。
もっとも、かつてのように血で血を洗う抗争にはならない。
深刻な事態を回避する方法があったのだ。
それは各クランからの代表者が面白い話をして、一番ウケた代表者の出身クランが勝利するという話芸のコンテストだった。
「何じゃそれは! どこが忍者なんだよ!」
そんな意見はあるだろう。
しかし、このお笑いコンテストこそ、新時代の忍者が目指すべきものだった。
忍者とは忍びの者、と書く。その名が示すように、目立たないことが求められる職業だ。だが、現代は忍者においてもアピールが求められる。そうしないと宣伝不足となり、新たな仕事のオファーを得られなくなるのだ。
存在を示すことが大事……いうなれば、忍ばない忍者こそが、現代の理想の忍者像だった。
そして、このコンテストの出場者こそ現代に求められる忍者の姿を具現化したものだった。
今回のコンテストに出場したメンバーを紹介しよう。
一人目は甲賀忍者の代表、咲耶。元気で明るい女子高生。目立ちたがり屋で、忍者や忍術はネット上で目立つための個性だと思っている。空回りすることが多いが、何事にも一生懸命。
そんな咲耶は、次のような話を披露した。
・バズる写真を撮るため、一般人が入り込めないような山奥を訪れた咲耶。そこには七色に光る湖があって……!?
二人目は伊賀忍者の代表、ネム。マイペースな性格で、何事もテキトーに流しがち。不器用なので、刀や手裏剣を持つとすぐにケガをしてしまう。絵が得意らしい。
そんなネムが語ったのは、こんな話だ。
・ネムの持ち物が次々となくなる事件が発生。犯人探しから意外な真実にたどり着き……。
三人目は風魔忍者の代表、シャオラン。とにかく怖がりで、手裏剣や刀は怖くて持てない。口寄せの術で召喚する、パンダのリーリーのことが大好き。実は結構しっかり者。
そんなシャオランは、こんな意外な話をした。
・ある日目覚めると悪役令嬢になっていた!? シャオランは忍者の技を駆使して、破滅する運命を覆す!
四人目は雑賀忍者の代表、エブリスタだった。エブリスタは雑な性格で、同僚や取引先に迷惑を掛けることで名が知られていた。その仕事ぶりは驚くほど雑でケアレスミスが極めて多いのが特徴だったのである……というか、それって大丈夫なのか、と思わなくもないけれども事実は事実である。雑賀だから万事が雑というわけではないだろうが……とにかく、信用度は低かった。従って聴衆の忍者たちは何の期待もせずスマホに目をやりながら話を聞いていた。
エブリスタは『忍ばない!クリプトニンジャ咲耶』コンテストに関する話をした。そしてコンテストの賞典がジェネラティブNFT2枚と賞金6万円だと告げた。
その話を聞いて聴衆の忍者たちは色めき立った。
NFT。それこそが忍者たちの知りたいものだったからである。
エブリスタは次のように語った。
↓
※NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)とはブロックチェーンを基盤にして作成された代替不可能なデジタルデータのことです。
※NFTの受け取りにはMetaMaskのウォレットアドレスが必要です。ご要望がございましたら、運営より受賞者へNFT受け取りのサポートを行います。
※必ず@estar.jpを受け取れるようにメールの設定をお願いいたします。
↓
その話を聞いて、忍者たちの心は決まった。雑賀忍者の代表、エブリスタの優勝である。
コンテストの優勝者であるエブリスタは、自分を選んでくれた聴衆の忍者たちに、この場でコンテストの賞典であるジェネラティブNFT2枚を見せようと約束した。それを聞いて会場は大盛り上がりである。
応募作品に「#クリプトニンジャ咲耶コンテスト」のタグを記載すれば、エントリー終了だとエブリスタは説明した。
「それではタグを入力します」
エブリスタは「#クリプトニンジャ咲耶コンテスト」のタグを入れた、すると! 画面に赤い文字が表示された。
『文字数の上限を超えています』
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