君がいる場所

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「翔太の欲しかったもの……いえ、翔太を返して欲しかったんです」  窓一つない殺風景な部屋で、わたしは刑事さんに答えた。彼にも伝えた、嘘偽りのない正直な気持ち。やり遂げたわたしには、もう包み隠すようなことは何もなかった。  わたしが真っ直ぐ見つめると、刑事さんは困り果てたように眉をひそめて、目をそらした。 「刑事さん、伝言をお願いしたい人がいるんです。いいですか」 「約束は出来ないが、一応聞いておこう」 「三倉高校に通っているカワセシオリさんに、上手くいきましたとお伝えください」  刑事さんはため息をつくと、側に立っていた女性警官にわたしを外に出すよう合図をした。  無機質な廊下に、わたしと警官が歩く足音だけが響く。  わたしの両手には、彼の背中を突き飛ばした感覚がずっと残っている。わたしが翔太がいる場所に行く日まで、きっと消えないのだろう。
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