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そんな彼が、ある日突然いなくなった。
わたしはその理由を知らないし、知るすべだって持たない。彼の高校に知り合いはいないし、彼が降りる駅は八つも先だ。
通学方法を変えたのかも知れないし、転校した可能性だってある。わたしがその理由を知りたがっていることを、彼もまた知る由もないのだ。
彼が座っていた場所には、彼と同じ高校の女子生徒が座るようになった。二日連続で座っていたところを見ると、彼がいなくなったことで座れるようになったのだろう。
彼女なら、彼のことを知っているかも。そんな考えが頭をよぎったが、すぐに声を掛ける勇気はなかった。
家に帰ってからも、彼のことで頭がいっぱいになった。四六時中、彼のことを考えている。こんなことは初めてだった。
ベッドに寝そべって天井を見つめていると、胸が高鳴っているのがわかる。なんとかして、彼の行方を知りたい。明日、勇気を出して彼女に聞いてみよう。わたしは決心した。
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