君がいる場所

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 総合グラウンドの駐車場には、多くの車が停まっていた。保護者たちも含め、応援する人でスタンドが埋め尽くされている。  彼が出場するのは午前の第二試合。わたしはスタンドの隅っこに座って、彼の姿を探した。青と黒のストライプのユニフォームが三倉高校だ。制服姿しか知らないし、距離もあるので区別がつかない。実は顔すら正面から見たことがないことに気づく。  幸い、ホームページにメンバー表がアップされていたので、背番号で判別がついた。背番号〝10〟の横に彼の名前がある。サッカーでは十番はエース番号だと聞いたことがある。彼は凄い選手なのかも知れない。  試合が始まり、彼がピッチの中央でボールを蹴り始めた。素人目にも、彼が中心になって試合を組み立てているのがわかる。彼がボールをコントロールし、的確にパスを送ってゴールを奪う。わたしは彼からひとときも目を離さないように努めた。  終わってみれば、三倉高校は五点差をつけて試合に勝った。かなりの大勝らしく、応援している人たちは狂喜乱舞している。ピッチから引き上げていく彼は、爽やかな笑顔でチームメイトとハイタッチしている。わたしはそんな彼の姿を目に焼き付けた。  その日の夕方の駐車場にて。  大会が終わった選手たちがバッグなどを車に積み込んでいた。待ち構えていたわたしは、彼を見つけて声をかけた。 「これ、読んでください」  彼に渡すために用意していた手紙を差し出す。彼はキョトンとした顔をしたが、うなずいて受け取ってくれた。  わたしは気持ちを抑えきれなくなって、その場を足早に立ち去った。
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