君がいる場所

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 わたしは今日も、電車に揺られながら通学する。大都市のように乗車率二百パーセントなんて言葉は聞かないものの、朝の時間帯に座席に座れることはまずない。  降りる駅の出口に近くなる三両目に乗り込み、向かい側の吊り革の一番左端を掴む。ここがわたしの定位置だ。  わたしは目の前に座る男子高校生に目をやった。  着ているおしゃれな制服は、有名進学校のブレザー。ラフなスタイルの短髪に、メガネをかけ、少し首を斜めにして本を読んでいた。  わたしと同じく、彼もまた、毎日その座席を定位置としているようだった。一昨日も、昨日も、彼は同じ格好で本を読んでいたのだ。  彼が読んでいるのは今話題になっているミステリー小説だった。わたしはあまり本を読まないので興味はなかったのだが、テレビでも紹介されていたのを最近知った。  わたしがいつも同じ時間に前に立っていることを、彼が認識しているかはわからない。彼はわたしがいる間、ずっと本から目を離さないからだ。  今のところは、存在を知っているだけの相手。同じ時間、同じ空間を共有するだけの存在だった。
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