あの日の私へ

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『んねぇ?今、幸せ?』 「ん?どうしたの急に」 『んー、何となく聞きたくなったから…さ…!』 「そうだねー、昔よりかは幸せかも?」 『どうして?』 「今のあんたみたいに、そうやって悩まなくなったから、かもね」 『…悩まなくなったら、幸せなのかな』 「幸せが悩むことで無くなるのかどうかは分からないよ? でも、親と一緒に住んでた時はさ? なんで勉強なんてするんだろう?なんで生きてるんだろう?生きる理由は? って考えると思うの」 『うん。よく考えてる。』 「でもさ、こうして、馬鹿でも阿呆でも、こんな私でもよ?親元から逃げ出してさ。一人暮らしするじゃない?」 『うん』 「もう考える時間なんてないのよ! ああ、掃除しなきゃ。ああ、飯作らなきゃ。 ああ、仕事行かなきゃ。支払いしなきゃ。 考える間もなく歳とってくのよね」 『よく、色んな大人の人が言うよね』 「そうだねぇ…考える事ないから、悩まなくなったし、心は楽になった。 これが幸せなのかって言われたらその人それぞれじゃないかな?」 『…考えなくていいのは、いいなって思う』 「そうだね」 『逃げ出したくなる時ってあるじゃん?』 「例えば?」 『今度こそ満点取らなきゃ志望校受からないよって、怒られた後に受けたテストの点が低かったりさ…』 「うん」 『先生に怒鳴られたりして、音が怖くて驚いて苦しかったりした時とか…』 「あったねぇ」 『どうしようもなくて、親にも言えないから1人で布団に入って苦しんだ時とかに、逃げ出したいなって思うんだよね』 「うんうん」 『だから、いいなって思う。考える時間ないのっていいなって思う』 「たぶんね…そういう些細…って言ったらダメかもだけど、心にチクチク来るような破片みたいな思い出は、大人になっても考えちゃうよ」 『そうなの?』 「うん。だって、私だって嫌だもん。上司に怒られるのも、失敗するのも。でも、大人だからさ、契約の上で成り立ってるからね?逃げられないの」 『…そうだね』 「だから、そんな時は!」 『ん?』 「直ぐに謝って、次の日は何食わぬ顔で、挨拶したらいいの」 『…出来るかな?』 「怖いだろうけど、挨拶したら起きたことはもう終わり、次の事が待ってるから」 『そっか、ずっと考えなくてもいいんだよね』 「そうそう」 『ねぇ?』 「ん?」 『頑張ってくれてありがとうね』 「それは、こっちのセリフ。 頑張って耐えてくれてありがとうね」 『うん』 「あんたのおかげで、私がここで生きてるから。 今は、幸せだから」 『…うん』 「考えすぎんで、羽広げて青春してこい! また悩んだら、ここに来たらいいよ」 『ありがとう』 「さあ、朝だ」 『うん!学校行ってくる!』 「行ってらっしゃい」 『また、会おうね!』 「いつでも、待ってるよ」
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