05.透明なガラス越しに

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05.透明なガラス越しに

 夏休みが終わり、ふたたび学校が始まった。翔太は小学校に行くのが憂鬱でしかたなかったが、祖父母を心配させたくないと出かけていった。相変わらず教室にいる同級生たちは翔太を無視し、こっそりと嘲笑した。親がいないと。祖父母と名字が違うと。  自分たちと同じでない存在が面白く、それだからこそ嘲笑しても良いと思ったのだろう。翔太はクラスの誰とも違う存在だったから。お父さんはとっくに死んでしまっていたし、お母さんはどこかに行ったっきり。翔太自身は祖父母と三人暮らしだから。  翔太は孤独だった。友達もいないし、自分の心のうちをさらけ出せそうな相手もいなかった。金魚だけが心のよりどころとなった。  ねえ、本当はお母さんと一緒に暮らしたい。お父さんがいないのはしょうがない。病気で死んじゃったんだから。でも、なんでクラスの中で僕だけ、お母さんが別のところにいるんだろ。  金魚鉢の透明なガラス越しに翔太は金魚に心の中で語りかけた。
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