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---ピンポーン。
家のチャイムが鳴って扉を開けると、べろべろに酔っ払った鳴海が扉の前にいた。
「どうしたんですか? そんなに酔っぱらって……飲みすぎじゃないですか?」
「いいの、いいの。こういう日があった方が人生は素晴らしいんだから」
意味不明な発言をしながら、部屋に入ってきた鳴海は持ってきていた缶ビールを開けて、寝転がった。
「なんで結愛ってこんな何もないとこに引っ越してきたの?」
「なんですか、藪から棒に……」
鳴海の顔を見ると、先ほどまでの様子とは変わって真っすぐと結愛の方を見ていた。
「以前住んでいたところでは人間関係でうまくいかなかったんですよ。だからこっちに来たんです。見ての通り、僕は男っぽいでしょ? これが原因なんです」
結愛はオーバーサイズの服とベリーショットの髪型を指さしながら言う。
「原因だなんて、まるで結愛が悪いみたいな、そんな風に言わないで……。私は結愛が男っぽくても、もし本当に男の子だったとしても気にしないよ。だから、結愛も気にしない方がいいよ」
結愛は泣きそうになっている鳴海の顔を見て、優しい人だなと思った。
親や周囲から女の子らしく生きなさいと言われたり、身体の変化にも違和を感じていたが、そんな自分をそのままでいいと肯定してくれる鳴海に救われたような気がした。
もしかしたら鳴海さんは僕が男だということを何となく察していたのかもしれない。
「鳴海さんは優しいですよね」
「そんなことないよ……私は最低な……人殺しだもん」
「それってどういうこと……」
結愛がそこまで聞いて、鳴海の方を見ると、鳴海は眠っていた。
お酒をたくさん飲んでいたようだし、仕方ないか……。
結愛は鳴海が風邪をひかないように、布団をかけようとした時、服がはだけた鳴海の腹部に視線がいった。
そこには手術痕があった。
結愛はそれを見ないようにして、そっと布団をかけた。
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