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結愛は机に置かれた鳴海の遺書に目をやった。
倒れている鳴海を発見したのは結愛だったのだが、救急車を連絡したときにはすでに遅く、鳴海は亡くなっていた。
その際に、結愛は鳴海の遺書を見つけたのだが、気持ちの整理がつかず、まだ読めていなかった。
こぼれる涙を拭いながら、遺書に手を伸ばし、読み始めた。
―――
私は生きていくのが苦しかった。
何をするにも亡くなった子供がちらついてしまって辛かった。
私のことを慕ってくれている人がいるのは分かっているが、先に逝くことを許してほしい。
私は自分の子に会いに行くことにした。
私には親がいなかった。
私を生んだ人物はいたけれど、その人は親とは言い難かった。
家での生活がうまくいかなかったため、私は家を出て仕事を始めた。
仕事に取り組む中で私は子を身籠った。
父親は誰なのか分からない。
けれど、私は産むことにした。
私はどうしようもない人生を歩んできたけれど、責任を持って、育てようと思っていた。
もしかしたら、私自身の孤独を埋めたいという気持ちもあったかもしれない。
それでも、しっかりと育てようという気持ちは本物だった。
でも、赤ちゃんは生きられなかった。
予定よりも早く生まれた赤ちゃんは生後一週間を絶たずに天国に行ってしまった。
きっと私のせいで生きていけなかったのだと思う。
つよい子に産んであげられなくてごめんね。
―――
鳴海の遺書は雨粒にでも打たれたかのように、所々、字が滲んでいた。
鳴海さんに生きてほしいと思ったのはきっと僕のエゴだ。
僕自身が勝手に鳴海さんと姿を重ね合わせて、孤独にさせたくないと思っただけなんだ。
いや、もしかしたら違うかもしれない。
僕自身が孤独になることを恐れたから、鳴海さんに縋っていただけのかもしれない。
それでも、生きてほしかった。
寒いというのは分かっていたが、無性に一服したくなったため、結愛はベランダに出た。
澄み切った冬の空に凍星が輝いている。
煙草に火を点け、煙を肺に落とし込む。
おいしいという感情は特にない。
ただ吸いたくなったから吸っているだけ。ただの惰性で、もはや喫煙が呼吸みたいなものだ。
煙を吸い込み、息を吐く。その繰り返し。
依存しているのは分かっている。やめられるだろうか……。
あっという間に一本吸い終わり、次の煙草に火を点けようとした時、ベランダの隅に置いてあった灰皿に気が付いた。
鳴海さんと一緒に使っていたやつだ……。
空を見上げると月光が滲んで見えた。
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