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遠くに誰かが歩いている。
その後ろ姿は結愛にとって見覚えのあるものだった。
あれは……もしかして……鳴海さん?
結愛はその姿を追いかけるように、必死に鳴海の方へ走った。
「鳴海さん! 待ってください……僕もついて行きます!」
ひたすらに走り続けて、やっとのことで鳴海に追いついた。
「足、早すぎですよ。僕も行くんで、ちょっとは待ってくださいよ」
結愛の方を振り向いた鳴海の表情は酷く悲しそうだった。
「鳴海さん? なんでそんなに辛そうなんですか?」
「着いてきちゃだめだよ」
鳴海のその言葉を聞いた瞬間、結愛の首元に向かって人の手が伸びてきて、喉元をゆるりと締め上げた。
急に息が苦しくなって体が飛び上がる。
それが夢だと理解するのに時間はかからなかった。
むせ返って咳が出ると喉が痛く、頭痛も酷かった。
咄嗟に窓に目張りしたガムテープを剥がして、ベランダに繋がる掃き出し窓を開ける。
寒いけれど新鮮な空気が部屋の中に入り込んでくる。
なんて馬鹿なことをしようとしたんだろうか……。
不意に、夢に出てきた鳴海の表情を思い出すと、余計に胸が苦しくなって涙がこぼれた。
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