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その翌日からというもの、少女は日没頃に時折顔を出し、今度は想い人ではない誰かを捜す眼で公園を見回すようになった。いったい誰を捜し求めているのだろうと、同様に少女のてらてら光る生命を追っていると、ひとつの姿を見ては私の視線を少し過ぎたところに微笑みを返していた。少女の視線の先には、私とその仲間しか存在をはっきりと区別できぬ彼がいた。少女の手許には軽く包装された透明のギフトバッグが、数粒のチョコレートを携えてラメ付きモールのピンクリボンで封をしてあった。
彼は照れくさそうに「おれは食えねえんだって、」と私の頭上でペタペタと音を立てて少女を追っ払っていた。だが少女が悲しそうな顔をする度にウンウンと頷いてやると、少女もウンウンと満足気に真似をして大人しく帰っていくのだった。
「優しいネエ、カラスさん。」
私がそんな彼のハートをチョイと啄いてやると、爪を立ててコンコンと頭上に傷をつけて「うるせえぞ」の合図をされるので、おちょくるときは彼が決まって機嫌をよくした日にしてやることにした。そんなときの彼は元々の調子の好さを発揮して図に乗るのだ。
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