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「どうしたんですか?」
あまりに無言のままだったので柳井部長の横に立ち、声をかけると
「んー?」と顔を向けて柳井部長は答えてくれた。
「いや、久々に全員揃ったなーって思って」
「え……」
その言葉が意外で、
「あの……」
俺は真意を問おうと口を開いたけど、言葉を紡ぐより早く柳井部長は立ち上がったから。
――どうしてたったそれだけのことで、そんなに嬉しそうな顔が出来るんですか。
喉まで出かかったその言葉を無理矢理飲み込んだ。
柳井部長は手を二回叩き、声を張り上げた。
「はいはい、そろそろ十五分前だから、書いてない人は早く書いてね」
部長の言葉にハッとして時計を見ると、下校時間の十五分前を指していた。
「一ノ瀬くんもね」
俺にも声をかけて部長は座った。「柳井」と表紙に書かれたノートを横に置いて、再びパソコンをいじる柳井部長に違和感を感じて俺は尋ねた。
「あれ、部長は?」
「私は来てすぐ書いちゃった。今日は書きたいことがあったから」
そう言った後、ちっと舌打ちが聞こえた。画面を見る限り行き詰ったらしい。
俺はそんな部長を横目に、自分の席に戻って再びノートを前にした。
この文芸部の、唯一表立った共通のルール。それは一日一つ、せめて部室に来た時だけでも何か書く事。作品でも、その日一日の感想でもいいから、一ページ、一行でも何かを書く事。
ただ、それだけだった。
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