第二話 少年は社会の荒波に揉まれて大人になっていく

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「一ノ瀬、お前水差すなよ」 「たまには息抜きも必要だぜ?」 「息抜きばっかりじゃないですか」  俺はため息を吐いて、持っていたシャーペンの先をさ迷わせた。今日もノートは白い。 「他の奴ら遅くね?」 「喜多川は用があるって言ってたし……」  俺は思い出してあっと口にした。 「部長はちょっと遅れてくるって言ってました」  ここに来るときに廊下ですれ違って、早口でそう言われたから理由は聞き取れなかったけど。 「は? やる気あるんかあいつら」  自分たちもゲームばっかりしているくせに。 「そうだ、一ノ瀬お前も混ざれ」  仲渡先輩がカードをシャッフルしながら言った。 「え」 「仲渡逃げんのかよ!」 「そうじゃねぇよ。やっぱり人数多いほうが面白いだろ。もしこれで俺が負けたらちゃんと奢ってやるよ」 「一ノ瀬が負けたら?」 「一ノ瀬の奢り」  なっ……! 「何でそうなるんですか!」  聞き捨てならない。思わず立ち上がって机を叩く。するとシャーペンが手の下敷きになって痛かった。だけどそんなこと言ってられない。  自分でも予想外の大きな声が出て、香藤先輩と仲渡先輩がびっくりしてこっちを見た。 「と、とにかく俺はしませんから」  なんとなく気恥ずかしくなって机に転がったシャーペンを握って座る。 「へぇ」  仲渡先輩の声がして顔を上げると、口角を上げた先輩と目が合った。    ——―嫌な予感がする。
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