第二話 少年は社会の荒波に揉まれて大人になっていく

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「お前、逃げるんだ」  さっき香藤先輩が仲渡先輩に言ったのと同じ言葉。  予感的中。 「え、あの別に逃げるとかじゃ……」 「じゃなんだよ」 「そうだそうだ!」  香藤先輩、あなたどっちの味方なんですか! 「はぁ……分かりましたよ、やりますよ」  渋々そう言うと、二人は無言でハイタッチを交わした。 「でも俺、ウノ出来ませんよ」 「何でだよ」 「やったことないので」 「はぁ?」  いや、そんなこと言われても……。 「教えながらやるのも面白くねぇしな」  仲渡先輩が困り顔で唸っていると、香藤先輩が「安心しろ」と何やら棚の辺りをごそごそと漁りだした。 「これがある」  香藤先輩が取り出したのは、少し古びたトランプ。この部室には結構色んな物が揃っているな……。 「トランプか」 「で、何する?」  香藤先輩がカードをシャッフルしながら言うと、仲渡先輩が俺に顔を向けた。 「お前、何できる?」 「え? えーっと……」  急に振られて少し焦って考えて答えた。 「ババ抜き……?」 「は? ババ抜きかよ、もうちょっとマシな……」 「いや、いいかもな。ババ抜き」  二人からクレームがくるかと思って身構えていたけど、意外にも仲渡先輩からフォローの声がかかる。
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