第一話 これが文芸部の日常です

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第一話 これが文芸部の日常です

「薫~今日カラオケ行こうぜ」  皆の足取りが軽くなる放課後。俺、一ノ瀬 薫は身支度をしていた手を止めて、声をかけてきたきた親友、高瀬和人の方を向いた。 「ごめん、俺今日部活あるから」 「はぁ? お前部活なんてやってたっけ?」  俺、そんなの聞いてないぞ、と口を尖らせる和人。俺は内心しまったと心の中で舌打ちをした。 「小学校からの付き合いなのによー。なんで教えてくれなかったんだよ」 「え? まぁ……ちょっと」  俺が口ごもるのを見て和人はニヤリと口の端を歪めた。それを見て俺は少しげんなりした。  こいつ、せっかくスラリと背が高くて顔も悪くないのに、こういうところがもったいないんだよなぁ……。 「なぁ」  俺の心中を知ってか知らずか、ニヤニヤしながら俺の肩に腕を置く。 「なんだよ」 「何部なんだ? お前」  さすが小学校からの腐れ縁、俺が口籠ったところを容赦なく突っ込んでくる。 「……部」 「え?」 「文芸部」 「文芸部?」  和人は訝しげに眉根を寄せた。 「文芸部って、あの噂の?」 「まぁ」  俺は渋々頷いた。 「変わり者の集団だろ?」  俺は黙って頷くことも否定もしなかった。仮にも同じ部活の仲間だ。悪い印象は与えたくなかったけど……。 「お前も大変だな」  無言を肯定と受け取ったのだろう。和人は俺の肩を二、三階叩いた。  顔がにやけているとこが癪に触る。  だけど、否定できない悔しさの方が勝って、俺は深い溜息を吐いた。
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