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「あれ、他の人は?」
真城先輩が部室内を見回して言った。
「まだ来てないみたいですよ」
その言葉を聞いた真城先輩は大袈裟に声を張り上げる。
「何っ!? それはいかんな。柳井さん、しっかり指導しないといけないんじゃないかい?」
「みんな忙しいんでしょ」
再びパソコンに向かいながらマウスをカチカチしながら答える。
「ほぉ、じゃあ二番乗りの柳井さんはよっぽど暇なんだね」
「二番じゃないです。部長が一番乗りです。俺が二番です」
俺の言葉に真城先輩は声を上げて笑った。
「じゃあ柳井さんが一番暇人なんじゃないか」
部長はちゃんと時間通りに来たのに何この言われよう。
俺が部長にちょっと同情しているとき、当の本人は頬杖をつきながら答えた。
「そうだね」
あ、ゲームに夢中になって適当な返事しかしてない。同情して損した。
真城先輩はやれやれと息をつきながら棚から自分の名前が書かれたノートを抜き取り、机の上に置いて鞄の中から出した本を読み始めた。
俺はというと筆箱から取り出した愛用のシャーペンを握りしめたまま、広げたノートに何も記せずにいた。
白い紙の上でペン先を彷徨わせていると再びドアが開かれた。
「……遅くなりました」
「お疲れ様です!」
入ってきたのは女子二人。
スカートは二人とも柳井部長のように長すぎず、かといって短くもない。
一人は真っ直ぐな髪を肩に付くか付かないかぐらいの長さにしている。
先程入ってきた時に発せられた声と同じく、静かで落ち着いた色を瞳にも映し出していた。
一方、もう一人の元気よく入ってきた方は、ニコニコと人懐っこそうな笑みを浮かべていた。ショートヘアが丸っこい顔によく似合っている。
セミロングの方は紀藤先輩。文芸部員二年。
ショートの方は滝井先輩。同じく文芸部員二年。
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