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二人も自分たちのノートを手にして座る。
「紀藤さん、滝井さんお疲れー」
「お疲れ様です! あ、部長例のやつ持ってきましたよ!」
柳井部長は滝井先輩の言葉におっ、と嬉しそうな声を上げて振り返った。
「ありがとう、滝井さん」
椅子から立ち上がって滝井先輩から一冊の本を受け取った部長は嬉しそうに本を開いた。
「真城先輩……それ新作ですか?」
「おぉ、分かるねぇ、君!」
紀藤先輩が真城先輩の読んでいる本を覗き込んでそう言うと、真城先輩は満面の笑みを咲かせた。
俺の前に広げられたノートは白いまま。ペン先は相変わらず迷ったまま宙を泳いでいる。
困った。
軽い溜息を吐いていると、賑やかな声が聞こえてきた。
「あいつマジねぇって」
「あれは長すぎだな」
その会話と共にドアが開かれ、入ってきたのは男子二人。
苛立った様子で頭を掻いているのは、柳井部長程ではないものの小柄な体をしている。太い黒縁眼鏡の奥にある垂れ目は不機嫌そうで、手にしていたナップサックを机の脇の床に直接置いた。
一方、もう一人は細身で背が高い。黒縁眼鏡の先輩と並ぶとより際立っていた。真城先輩より高いんじゃないだろうか。
頭は短めの坊主にしていて、切れ目のせいか不機嫌そうにしているとなんだか乱暴なイメージを与えた。
黒縁眼鏡は香藤先輩。文芸部員二年。
もう一人は仲渡先輩。同じく文芸部員二年。
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