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「あいつの話マジ長ぇよ! ……あ、俺ノート持って帰ってたわ」
ナップサックとは別に持っていた鞄の中から一冊の大学ノートを取り出しながら、香藤先輩は一人口にする。
「香藤くん、先生をあいつ呼ばわりしちゃだめでしょ」
柳井部長が滝井先輩から受け取った本を、自分のトートバックの中に滑り込ませて苦い顔で言った。しかし、当の香藤先輩は悪びれた様子もなく、
「出たよ出たよ出たよ! 部長の真面目発言!」
「生きた化石だな」
いや、というか……。
「常識でしょうが!」
部長の怒号が飛ぶ。俺が言いたかったことと同じだ。
「あーはいはい、分かりましたよ。……あ、一ノ瀬、俺のノート取って」
反省の色が全く見えない仲渡先輩の黒いノートを立ち上がって手にする。
「仲渡先輩、どうぞ」
「おっサンキュ」
俺の手からノートが離れた瞬間、その声は響いた。
「すみません、遅れました!」
息切れしながら慌てて入ってきた人物は、中肉中背で特別低くも高くもない。健康的な黒い肌をしていて、その額にはうっすらと汗が滲んでいた。
「あーお疲れさん」
「お疲れ様です」
部長の軽い挨拶にも丁寧に返す。未だこの人が先輩に対してこの丁寧な態度を崩したところを見たことがない。
喜多川先輩。文芸部員、二年。
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