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「大沢さん遅いねぇ、何のんびりしていたんだい?」
入ってきた二人にまず声をかけたのは真城先輩だった。
「うるさい真城、あんたにいちいち言う必要ないでしょ」
そうやって睨み合う二人。この二人の仲はすこぶる悪く、喧嘩しない日はないほど。
「でも遅かったね、何かあったの?」
ゲームを再開させた柳井部長が橋口先輩に尋ねると、橋口先輩は肩をすくめて答えた。
「ううん、何も。ただ先生の所に質問しに行ってただけ」
そう言って橋口先輩は自分のノートと、ついでに大沢先輩のノートも手にすると机についた。
棚からノートの姿はなくなった。
「ノート、ここに置いておくからね」
「大体大沢さんは……」
「何であんたにそんなこと言われなきゃいけないの!」
橋口先輩が丁寧に知らせているけど、大沢先輩は真城先輩と喧嘩の真っ最中で気付いていない。
「喜多川―帰りカラオケ行こうぜ」
「え、俺お金ないよ」
「なんだ、お前ノリ悪いぞ!」
「しょうがないだろ!」
喜多川先輩が可哀想に思えてきた。
「紀藤―今日の宿題の範囲教えてっ」
「またなの、滝井ちゃん。まぁいいけど」
そんな会話が狭い部室内で交わされている。
ふと会話に加わっていない柳井部長を見ると、他の先輩達の様子を眺めていた。いつの間にかゲームを止めていたらしい。
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