新入部員の独り言

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新入部員の独り言

 五月〇日  晴れ  高校に入学して早くも一ヶ月が経った。  桜も散ってしまい、新しい校舎とクラスメイトにはすっかり慣れた。  もう少しかかると思っていたけど、人の順応性というのは本当に凄いと思う。  だけど。  この部に入部して早一週間経つが、一向に慣れる気配がしない。一ヶ月経っても二ヶ月経っても慣れる自信がない。 「おい、返せよ!」 「何でだよ、一個くらいいいじゃねぇか!」 「ばかばかばか、これは二個入りだろうが! お前にやるもんなんかねぇよ!」  アイスを取り合う男子が二人。ていうか、学校にアイス持ち込むなよ……。 「でもここが……」 「私が思うに、ここは……」 「いや、俺はこれだと……」  真剣に議論する人が三人。でもやってることはクロスワードなんだよな……。 「……」  我関せず、という顔で課題のプリントにペンを走らせる人が一人。  ツッコミなしですか……。 「そんなんばっか食べてるから太るんだよ」 「あんたにそんなこと言われたくない! ばかぁ!」  喧嘩してるのが二人。非常にうるさい。  そして。  「いやぁ、いいねぇ皆仲良くて。仲良きことは良きことかな。青春だねぇ」  何やら呑気なことを口にするのが一人。背後のパソコンの画面にはトランプゲームをクリアした後らしい花火が打ち上がっている。  九人中四人が喧嘩してるのに、どこをどう見たら仲良く見えるのだろうか。というか台詞が年寄り臭い。自分も青春真っ盛りのくせに。 こんな個性的な面々に囲まれて、俺の高校生活は無事に過ごせるのでしょうか。
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