青空の掃除人

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ガチャガチャと金属同士がぶつかり合う音が聞こえ、ドアベルが鳴った。 「おかえりなさい、お疲れさま、皆さんどうぞ上がって」 「ただいま」 旦那様とハグ。 そのわきを失礼しますと上がり込む人たちが、体につけていたのを外し、廊下にきれいに並べていく。 奥ではきゃははと赤ちゃんの笑い声が聞こえてきた。 旦那様の仕事仲間と春と秋の仕事上がり、子供ができてから、つかの間のティータイムはこれで五度目。 お酒が出せないのは残念だけど、みんなが無事に仕事終えた、それだけでうれしい。 子供の成長を見守ってくれる彼らには感謝している。 特別な時間はすぐに終わり、彼らはまた違う仕事場所へと向かう。 子供は、さっき窓ふきをしていたのが彼らだとは気が付いていない。 でもいつかは気が付く日が来るだろうな。 バイバイと手を振って出ていく人たちに機嫌がいいのはなぜかしら?私が抱いて手を振っているからかしら? するとダーリン。 「いってくるよ、すぐに帰ってくるからな」といった。 そこまではよかった。 彼がヘルメットをして、手を振った時だ。 「いやー!」 その大きな声と、振り向き手を伸ばすものすごい力。 「うわー、待ってー」 「おーっと!」 という彼に抱き留められた。 「どうした?」 いやー、ダメ―という。 「ははは、パパやママよりそっちかよ」と彼は笑った。 でも、子供はきょとんとした顔。 「どうかしたの?」 すると子供は私に手を振った。 「あら、ママにバイバイなの?」 どうも違うようだ、パパにも手を振る。 ニコニコしながら、子供を受け渡された。 彼は、またヘルメットをかぶりなおす。 「いやー!」 「どうしたの?」 すると彼は、ヘルメット外した。 泣き止んだ。あれ? 彼はもう一度かぶると、泣き出してしまった。 「こりゃ、わかっているのかもな」 そうかもね。 彼はヘルメットを外して手を振って出て行った。 「パパが好きなのね?」と子供に聞いたらきょとんとしていた。違うのかしら、まあいい、片づけてパパが帰るのを待ちましょうね。 大きな窓が気にいってこの場所に住もうとした。 でもそれだけじゃない。 「いいのかな?」 彼が隣で頭をかきながらこう言った。 私はその彼を見ながら、ここがいいとほほ笑んだ。 後ろから抱き着く彼は、ここから新しい生活が始まるんだなと嬉しそうに私のお腹をさすっていたあの日。 結婚して彼が仕事をする姿が見たくてここに決めた。彼が担当になるかわからないし、いつも見れるわけじゃないけど、彼が仕事に入る日には印をつけた。
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