3人が本棚に入れています
本棚に追加
彼との出会いは、この一年で終わるスクールを無断欠席した日。
いやなことが合って部屋から出たくなかった。
この時期に引っ越し、違うところへ行くのだというのだ。
父だけ行けばいいのに、なぜか家族で行くことになった。
私だけ置いていけばいいといったけど、弟も小さいし、まだ小学生だと言われ、泣くしかなかった。
明日も学校に行きたくないと思いながら机に臥せっていた。
すると何かが影を映した。
鳥?それにしても動きが変。
立ち上がりのぞき込むように上を見ると足が見えた。
何!
びっくりして後退り、ブランコのようなものに腰を掛けた人がだんだんと見えてきた。
ブランコにはいろんなものがついていて、窓ふきの人かと思い座りなおした。
へー、初めて見た。
まあこの時間に部屋にいることもなかったけど。
まるで大空を掃除するように彼の腕が動き出す。
すごいなー。
するとかすれるような声が聞こえる、どうも磨きのこしがあるのか、どなる声がした。
あんなに怒鳴らなくてもいいのに。なんで大人はどなって人を支配しようとするのだろう?
大人は誤らない。
子供がどんなに正しいことをしてもだ。
子供は黙っていろ、そんな言い方をされた。
だから大人は嫌いだ。
親も嫌いだ。
腹が立って、壁を蹴った。
「神様なんてこの世にいない!」と机に伏せた。
コンコンと音がした。
いつの間にか降りてきた人。
あれ?若い人?
同じぐらいか、もっと子供に見えた。
でも次の瞬間、「うわー、中のぞかれてるんじゃん」と思ったら急に恥ずかしくなって顔を伏せた。
外の人は気にすることなく仕事をしているように思えた。
机に映る影が左右に手を振っているように見えたからだ。
静かに顔を上げると目が合った。
うわーと、また下を向いた。
早く行ってほしいと思うの半分、仕事を見たいと思うので目だけ動かすと、私をのぞき込むように見る人と目が合った。
すると彼は胸に手を当てお辞儀をしたの。
それがまるで王子様のようで、私はそこにいるのが恥ずかしくなって、部屋を飛び出したの。
それが彼との初めての出会い、でもそれ一回きり。
古いアパートだがきれいで母はよく自慢していたここともお別れ、窓ふきボーイに会うことはない。
窓にメッセージを残した。見ることはないだろうと思いながらも、いつもありがとうで始まり、今の気持ちを綴り、さようならをかいた短い手紙を張り付けた。
最初のコメントを投稿しよう!