青空の掃除人

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引っ越した先での一年後、もうすぐ春、でもまだ寒い日が続いていたある暖かな日。 ハイスクールもなじめず、まだ知らないこの町、公園から目の前の建物をなんとなく眺めていた。 古い建物から新築、ビルディングは無機質なガラスだけが輝いている。 ワゴンが上から降りてきた。三人の人が、大きな窓を拭いている。 大変な仕事だな。 ホットコーヒーの缶がかじかんだ手の中で転がるが、彼らは冷たい水を使うのだろな? そう思いながら、前に住んでいたアパートで出会った窓ふきボーイを思い出していた。 それからは、何気ない風景の中でも上を見上げては、いるはずもない人を見つけていた。 ある日帰宅するとアパートの前で、帰り支度をする人たち。 上を見上げると今まさに上から降りてくる人たちを見た。 細いロープだけで体を支え、下りてくる姿はまるでスパーダーマンそのもの。口をポカーンと開けその様子を見ていた。 安全ベルトにヘルメット、声を掛け合って、安全確認をしながら下へ降りてくる。 すごいなー。 ワゴンに乗り込みかえる人たちをずっと見ていた。 私は、すぐに部屋に走って帰った。 「ただいま!」 母に、矢継ぎ早に、今来た窓ふきの人たちのことを聞いた。 知らないという母親に、管理会社に尋ねればいいと聞いて連絡。 春から秋にかけて、二か月に一度窓ふきをしてくれるそうだ。 それから私は、彼らにメッセージをかいた。 メモ用紙は可愛めのものを選び、いつもありがとうございますと書いたものを張り付けた。 もちろん、部屋の中は見られてもいいようにきれいにし始めた。 頑張ってください。 今日は風が強いので気を付けて! いい天気、暑さに負けないで! 些細なメッセージは、仕事をしている人よりも、あの日一度だけ見た彼にあてたメッセージだった。 夏休みになると彼らと会うことになる。 彼らの多くは大学生で、登山やクリフハンガーなど特殊なことをしているそうだ。私のメッセージに励まされているという、ありがとうといわれた。 次からは帰ってくるとポストにメモ用紙が入っていた。 そこには、いつもメッセージをありがとうと書かれたものだった。いろんな人の文字でメッセージが届いた。両親は驚いていたけど、それからは、弟たちまでもメッセージをかき始めた。それは二年続いた。 ハイスクール卒業後、私は大学へ行くため親元を出ることになった。 アパートも決めてきた、今のところのような窓ふきの人が来てくれるような所ではないけれども仕方がない。 私は最後の思いを手紙に書いて窓に張り付けた。 大学合格と、なぜ、メッセージを張り付けていたのか、私は素直に書いて張り出した。 その日、メッセージの返信はなく、弟も残念がっていた。両親も、こんなこともあるさと慰めてくれた。
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