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再会。
天国は人でごった返していた。毎日どれだけの人が死んでいるのかを考えれば当然だ。俺は列を抜け、辺りを見回した。天国は生き物ごとに区分けされており、俺は「猫 八百キロ先」と記載された案内板へ勝手に従った。死人に体は無いから、どこまででも走れた。ミイナに会うため命を捨てた俺に、今更躊躇など無かった。少しずつ、少しずつ、彼女に近付いている。俺の大切な家族、ミイナにもう一度会える。人は見かけなくなり植物や昆虫、動物など様々な生物が列をなしているのを見た。皆、ちゃんと天国に来るんだな、と感心した。
やがてその時が来た。猫の区画に辿り着き、息を大きく吸い込む。
「ミイナ!」
猫達が一斉に振り向いた。大きいもの。小さいもの。トラ柄、赤茶、ブチに三毛。大人に子供。色々な猫、それらの中に俺の唯一の家族がいるはず。
「ミイナぁ!」
必死で呼び掛ける。
「イタル、さん?」
不意に声が聞こえた。一匹の猫が皆の間を縫ってやって来る。それは。そこに、いたのは。
「ミイ、ナ」
膝をつき、手を広げる。
「そんな、どうして」
現れたミイナは呆然としていた。俺は涙を拭う。
「会いに来た。天国まで、君に会いに来たよ。俺には君しかいない。知っているだろう、家族は君だけなんだ。だから、命を捨てて、会いに来た。君に会いたかったんだ、ミイナ」
「……死んだかもわからないようにするため、姿を消したのに。あなたに決して見付からないよう、頑張って身を隠したのに」
「そんな気を遣うなよ」
「だって! 私が死んだとわかったら、きっとあなたは追ってきてしまう。だけどはっきり死んだとわからなければ、まだ踏みとどまってくれる。私、そう、考えたのに」
「ありがとう、ミイナ」
膝を叩く。ようやく駆け寄り飛び乗ってくれた。彼女の小柄な体を抱き締める。
「ようやく会えたね、ミイナ」
「……私も会いたかったです、イタルさん」
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