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ずっと、あなたに会いたかった。
三百十七年後。一人の男が交差点に立っていた。子猫の鳴き声が聞こえると同時に、男はしゃがみこんで傍らの植え込みを覗き込んだ。顔を出した子猫の顔は病気でひどく荒れていた。その子に男は人差し指を差し出す。子猫は躊躇なく匂いを嗅ぎ、小さな舌で何度も指を舐めた。そして顔を摺り寄せる。男が出した手に大人しく乗った。綺麗にしようね、と男は微笑みかけた。子猫もボロボロの顔を綻ばせる。男は子猫を優しく抱き締めた。
「久し振り、ミイナ。会いたかったよ」
その瞬間、男は確かに聞いた。
「私もですよ、イタルさん。ずっと、あなたに会いたかったです」
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