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ーーキーンコーンカーンコーン。
もうみんな教室から出て、わらわらと帰り始めている。今日で最後の教室をひとしきり噛み締めた私は、誰もいなくなった静かな教室でため息を吐きながら机に突っ伏した。
卒業式だった今日、私は好きな人へ告白するつもりだった。高校はそれぞれ別の場所へ行くことが決まっていて、今日が彼に会える最後だった…のに。
「風邪で休みとは思わないじゃん…」
よりによって最後の最後に会えないなんて…。考えても仕方のないことだけど、それでも運が悪いと思ってしまう。
「…諦めろ、ってことなのかなぁ」
少し体を起こし、窓の外を眺める。もう門の前にも人はほとんどいなくなっていた。そろそろ私も帰ろう、と席を立った時、教室のドアがガラガラと音を立てて開いた。
「あ?お前まだいたのか」
「せんせーこそ、何してるんですか?」
「俺は教室に忘れ物がないかとか確認しにきたの。…あ!そうだ、ちょっと頼まれてくれない?」
嫌な顔をしてみたが先生は笑いながら「まぁまぁ」とだけいい教室から出た。私も先生の後に続くと、着いたのは職員室。
「何させられるんですか?」
「とっておきの最後の仕事」
「はぁ…とっておきねぇ…」
職員室を見渡すが、他の先生は殆どいなかった。今頃は在校生と体育館の片付けを行なっているのだろう。
そんなことを考えていると、目の前に封筒と賞状筒が差し出された。
「…なんですか、これ」
「先生からのプレゼント」
「…は?」
思わず眉間にシワがよる。自分の卒業証書はカバンにしっかりと入れた。なのに何故もう一つプレゼントされなくてはいけないのか。
表情から意思が伝わったのか、先生はハハッと笑った。
「今日休んでたやつに届けて欲しいんだけど」
「…はぁ!?」
「お前、仲良かったろ」
先生はニヤッと笑うと、「だから、プレゼント」と言い持っていたものを押し付けてきた。
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