廃リゾートホテル1週間100万円BL

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8  千渡くんは俺を見たまま、瞬きを繰り返した。  あまりの反応のなさに、次第に心がくじけてくる。俺が手を放そうとすると、今度は千渡くんが俺の手を握った。 「僕はしたい」  それを聞いて、一歩彼に近づいた。二人のあいだにはほとんど距離がなくなる。抱きしめられて最初に感じたのは、彼の香りと温かさだった。       ***  あの幽霊が憑依した状態でも、千渡くんとの触れ合いは気持ちいいものだった。あれは彼だと思いこんでいたからこそかもしれないけど……。 「っ……」  現実のほうが何倍も良いなんて、そんなことあるんだろうか。  千渡くんが俺に触れるたび、すごく意味を感じたし、隠していた自分まで暴かれてしまうような心もとなさがある。  だけど、彼を信用している。  期待して、少し怖くて。それなのにとても素晴らしいことが待っているような気もした。  彼はキスをしながら、俺の腹をまさぐってくる。ただ気持ちが良かった。 「ん……」 「礼唯」  そのうち手のひらが、胸や鎖骨のあたりも行き来する。  撫で方がとてもじっとりとして、千渡くんに一つ一つ体の具合を確かめてもらっているようだった。  そのうち手は胸をまさぐり、乳首をいじってくる。千渡くんの指の感触は知っていたけど、以前とは違って感じられた。すごく新鮮で、なんだか……。  千渡くんにキスされながら、軽く乳首を触られているだけで、自然と声が漏れてしまう。俺はどんどん気持ちよくなっていった。 (ずっとこうしてたい……)  意識もぼんやりしてきて、けれど、彼が与えてくれる快感だけははっきりと分かる。  股間のものはいつのまにか完全に勃ちあがって、その先端がたまに千渡くんに当たってしまう。恥ずかしい。恥ずかしいのにじっとはしていられなくて、自然と腰が浮いてしまう。 「礼唯の反応って、すごくいい」 「あんまり見ないでよ……。電気、消せればよかったのに」  さっきの事もあるので真っ暗は抵抗がある。出入り口側の列だけ蛍光灯がついていた。それでも部屋は充分に明るく、互いの服も肌の質感すらも確認できた。  乳首を軽く摘んで転がされ、揺すられ、何かを確かめるように弄られ続ける。もどかしい感触に身を捩った。千渡くんは、もう少し刺激してほしい手前でやめてしまう。体はどんどん火照っていった。 (こんなふうに感じて……、俺、大丈夫か。もっとしてほしいって、言っていいかな……)  いままで信じきれていなかったけれど、千渡くんは本当に俺に性的な欲望を持ってたんだと実感した。そして、それを好ましいと思っている自分にも気づく。彼の息遣い。もっともっと近づきたい。 「千渡くん……」 「うん、礼唯……」  さっきから彼の反り立ったものが、俺の腹に押し付けられている。熱くて、固い。そこから質量を想像して、変な気分になった。千渡くんのそこを俺はしっかり見たことはない。 「ん、千渡くん……。当たってる」 「うん……。ごめん、何もかも刺激的で」 「素股する?」 「え……」 「手でするよりも、そういう事してる感じ……でるし」  俺は身を起こして、自らうつ伏せになった。そして、よくわからないなりに四つん這いになって少し腰を浮かせる。 「礼唯」 「いいよ」  背にぬくもりを感じたかと思えば、腿と腿のあいだ、陰嚢の横へ滑り込むように熱いそれが入ってきた。 (これ、すごいエロいかも……)  普段外気に触れないような部分を、千渡くんにさらけ出している。  抜き差しする彼の腰つきにはまだ理性が感じられて、俺はその様子に興奮していた。  こんなときにも、千渡くんは俺を思いやってくれている。彼はいつも明るくスキンシップをしてくるけれど、一定の線から先は過度に禁欲的でもあった。  人に見せても違和感のないハグや、肩を組むとか、手を握るとか。軽いキス。そういうものに躊躇いはない。  だがその先については、彼に不釣り合いなほど慎重だ。  その性格が、この行為にも反映されている気がした。 「礼唯、嫌じゃない?」 「大丈夫だよ」  定期的なリズムで疑似挿入が繰り返され、わりと早い段階で千渡くんは射精した。あっというまだったけど、行為を連想させるには充分だ。俺もドキドキしていた。  彼は大きく呼吸をしている。 「千渡くん……」 「ごめん……、礼唯、もう一度させて」 「え、……うん、いいよ」  今度は横抱きにされて、さっきと同じ箇所に抜き差しを繰り返された。俺の性器は直接刺激されているわけではないけれど、陰嚢やその周辺の振動で、俺も充分に感じられる。 「ん、っ……、千渡くん……」 「礼唯」  彼はそう言いながら、あいた手で俺の雄を優しく握った。まず、千渡くんに触られているというだけで興奮だったのに、竿をゆっくり扱かれる。 「んっ……あ、あっ……」 「礼唯。好きだよ」 「あっ、う……」  彼の手の動きは、徐々に早まっていった。先端や、裏筋、根本までまんべんなく触ってくれて、俺はただ感じ入ってしまう。 「千渡くん、気持ちいい」 「うん……、僕はきっとその何倍も気持ちいいよ。大好きな君に、こんなことしてる」 「っ……、俺、も……!」  ついに頂点まで高まり、俺はそのままの達してしまう。  脱力していると、じわじわと恥ずかしさが込み上げてきた。俺はたぶん千渡くんの手に射精してしまった。彼はしばらくすると起き上がって、ティッシュで手のひらを拭っている。 「……ごめん、手」  俺が思わず声をかけてしまうと、千渡くんは笑って言った。 「なんで? 僕なんて、さっき君のここに出したのに」  そういいながら、千渡くんは俺の腿の付け根をそっと撫でた。それだけで小さな声を出してしまった。 (気持ちいい……)  また千渡くんの顔が寄ってきて、俺は自然と目を閉じる。続きがあることが嬉しい。しばらく軽いキスを続けたあと、千渡くんは俺の胸を撫でながら言った。 「君とこういう事、したかった」 「うん……」  彼の丁寧な愛撫に、ひたすら胸がはずんでいた。頭の片隅によぎるのは、この先の行為。千渡くんに告白されてから少しの知識は得ていた。  千渡くんが上手いのか。それとも俺が刺激に弱すぎるんだろうか?  挿入がまだとはいえ、こんなになんの障害もなく男同士でも気持ちよくなれるものなのか、と驚いていた。  俺がただ身を任せていると、彼のキスは、首筋、鎖骨へとずれていき、やがて胸にまで下りてきた。もしかして、と思っていると、指でいじられ続けていたそこが、彼の唇に覆われる。 「っ……!」  キスだけでなく、彼の舌は乳首を舐めた。その感触に震えて、思わず息を飲む。やけに背徳感があった。 「あの、千渡くんちょっと待って」  彼は顔を上げた。 「何……?」 「だめ」 「なんで? 触るのは気持ちよさそうだったよ」 「それはそうだけど……。なんか、エッチだから……」 「エッチなことしようって、誘ってきたのは礼唯なのに」  彼は優しく微笑んで、その瞬間信じられないほど体が疼いた。魅了されるって、こんな感じなのかもしれない。そして、恥ずかしくなる。なんでこんな事してるんだろう。でもきっと望んでた。 「わかったよ。僕は君の味方だから……」  彼は俺のこめかみにキスをして、結局は手でその続きを始める。
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