理由

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「家族なんて血が繋がっているだけの他人じゃない」 「わたしは血も繋がってない他人だけどね」 「縁子(よりこ)は特別。親友じゃん」  冗談めかしてわたしがツッコミを入れると、レナは笑ってくれた。  その会話が、彼女と交わした最後の言葉になるなら、もっと考えればよかったと今更ながらに思う。  後悔なんてしても遅いけど。  翌日、彼女はいなくなった。  二人で話しながら一緒に眠りについたのに、朝目が覚めると姿が見えなかった。  荷物はそのまま。スマートフォンだけがない。  電話をかけに外に出たのかと思っていたけど、いくら待っていても戻ってこない。  わたしは授業の時間があるので、レナのスマートフォンにメッセージを入れて家を出た。  けれど、それに既読がつくことはなかった。  レナがいなくなった次の日の夜、わたしは海に足を運んだ。  仄暗い浜辺まで降り、波打ち際まで歩く。  遅い時間だったこともあり、誰もいない浜辺は静かで波の音しかしない。  10分ほど海を見て、帰ることにした。  次の夜もまたわたしは海へ足を運ぶ。  その次の日も、さらにその次の日も……10日間、夜の海を訪れた。  けれど、レナは一度も戻ってこなかった。  わたしは海に行くのをやめた。  春が来て、夏が過ぎ、秋になって冬が来る。  1年が過ぎ、2年が経ち……わたしは久しぶりに海にやってきた。  当然、レナの姿はない。 「レナ」  海に向かって名前を呼ぶ。  返事なんてあるはずがない。  でも、レナがそこにいる気がした。 「さよなら、レナ」  別れの言葉を告げる。  言えなかった最期の言葉を。
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