0人が本棚に入れています
本棚に追加
けれど、どこに行けばいいのかはわからなかった。
入り口もなければ出口もない、ただただ緑の世界。
「困ったな。どうすればいいんだろう……」
そんなとき現れたのは、木製のダイニングテーブルと椅子だった。
それはひろい草原にポツリと置いてあり、美里に座れというように、椅子と机の間が少しひらいている。
「なにこれ……」
迷ったけれど、座ってみることにした。
やはり何の変哲もない机と椅子だ。
つまらない、と立ち上がろうとしたとき、上から何かが落ちてきた。
「なにこれ」
うつくしく彩られたフルーツか、もしくは豪華なディナーでも降ってきたのかと思いきや。
ただの肉だ。
しかも、あらゆる種類の肉がどかどかと皿に盛られている。
夕飯の残り物をひとつの皿にまとめたときのように、雑な盛り方で。
あまりにダイナミックな食事に、なんともこの美しい景色とはずれを感じた美里は、つい吹き出しそうになった。
「本当におかしな世界ね」
でも、おいしそうには見えた。
焼いてあるのか、茹でてあるのか、どんな調理法なのかわからないけれど。
箸もフォークもないので、手でつまんで一口食べてみる。
すると、
「なにこれ。今まで食べたお肉の中でいちばんかも」
見た目は何の変哲もない肉なのに、味は絶品だ。
いつか旅行先で食べた、数万円するステーキの数倍おいしい。
ついクセになって、食べすぎてしまった。
でも途中で異変に気づく。
「あれ? ぜんぜんお腹いっぱいにならない……」
最初のコメントを投稿しよう!