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唖然と立ち尽くした後、恐る恐るあなたの方へとわたしは一歩を踏み出す……だが、そこへちょうど路線バスが到着すると、あなたは友人達とともにさっさと乗り込んでいこうとする。
「あ、あのう……」
咄嗟にわたしは声をかけたが気づかなかったらしく、あなたはそれを無視すると混み合う乗客達の中へ消えていってしまう。
「ま、待って! ねえ! 待ってったら!」
今度は大声で、わたしはもう一度声をかけるが無残にも眼の前で昇降口の扉は閉まり、バスはゆっくりと走り出してしまう。
「待って! 行かないで!」
わたしは慌てて後を追おうとするが、なぜだか脚が思うように動かない……あれよあれよという間にバスは遠ざかり、あなたを乗せたまま小さくなって消えてしまった……。
それ以来、わたしは毎日、このバス停の前に立つと、いつかまた、あなたが現れるんじゃないかと淡い期待を込めて待っている。
もちろん、それが極めて望みの薄い、万に一つもないことだろうことは充分わかっているのだけれども……。
ところが、あれからどれくらい待った後のことだったろうか?
わたしは再びこの場所で、眼を皿のように大きく見開くこととなった……。
最早、奇跡としか……いいえ、これは運命としか思えない……あなたが…あなたがもう一度、わたしの前に姿を現してくれたのだ!
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