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「どこで?」
「ここじゃない街。遠いところ」
意味深な言葉だが、深く詮索はしない。
「ねえ、会おうよ」
「すぐにはムリかな」
「どうして?」
「もう少し、ライのことを知りたい」
お互いを知ったところで、意味なんてあるのか?
どうせ長く続ける気もない。
暇つぶしの相手探しだ。
ただなぜか。そういうのも悪くないかなって、思った。
それからは、レイとのやりとりが日課になった。
生い立ち、好きなもの、趣味や好きなタバコの銘柄なんかとか。
半分は嘘。いやもっとかな、7割嘘で3割ホント。
「コーヒーはいつもブラックかな」
これも嘘。砂糖とミルク、アリアリで。
「そっか。私もコーヒーはブラック」
ははっ。
だから何だよ。って会話が、妙に楽しい。
会おうって話はそれから出てなかったけど、やりとりは続けていた。
この距離感と空気感ってのかな。
やけに心地いい。そんな気がしてた。
帰宅途中、歩きながらのやりとり。
「ライの夢は?」
不意に問われて、手が止まった。
仮想空間から現実に戻された気分だ。
少し考えて、返事を打ち込む。
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