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レイは今、病院にいるんだと教えてくれた。
そして病名も。
その病気は知っている。
長くは生きられない病気だ。
「だから、大事な人には夢をかなえてほしいなって」
大事な人? 俺が?
「会ったこともないのに?」
「いつの間にか好きになってたの。迷惑だったかな。ごめんね。仮想現実じゃ、本当の『恋』はできなかったから」
わかる。
彼女の言葉に、想いに、ずっと惹かれてた。
「恋はするもんじゃなく、落ちるもんだって聞いたことがある。今がそうなのかって、思ってるよ」
これが脳の錯覚だとしても。
嘘つきの俺にだって分かってた。
これがホントの、恋ってやつなのかなって。
「ライがお医者さんだったら、私の病気も看てもらえたかな」
「ヤブ医者のライと申します」
過度に重くならないように、不安にさせないように。
わざと軽口を叩く。
「ライ。私さ、今度手術するの」
この病気の成功率は、極めて低い。
レイはたぶん、分かっている。
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