夜空に咲く花

5/8
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「いつ?」 「3日後」  もうすぐか。 「終わったら、会いに行ってもいいかな」 「うん。そのときは抱きしめてくれる?」 「背骨が折れてもいいか?」 「あはは。やっぱり、ナシで」  そんな、他愛もないやりとりを繰り返す。 「うまくいくといいな。血液型占いしてやるよ。レイは何型?」 「私のは特殊なんだ。AB型rh」 「それ、1000人だか2000人に一人の血液型だろ?」 「占い結果は?」 「絶対大吉!」 「なにそれ」 「成功するってことだ」  俺は画面に向かって笑いかけた。  多分画面の向こうでも、レイは笑ってくれたと思う。 「その部屋から花火って見えるのか?」 「そう聞いてる。でもその日が手術だから、目が覚めたら終わってるかな」 「花火は終わっていても、手術が終われば会いに行く。病室と名前を教えてくれよ」 「えーっ!? 本気で言ってるの?」  キャラクターが照れたり、疑いの顔をしている画像が送られてくる。 「本気だよ。レイに会いたい」  返事が止まった。  歩道橋の上で柵にもたれかかり、ずっと街を眺めていた。とても静かだ。  しばらくして返事がきた。 「私もライに会いたい」  レイの顔は見えないけど、多分泣いているのかなって、そんな気がした。  彼女は本名、病院、それから病室を教えてくれた。 「本当は二人で、花火を見たかったよ」 「そうだな」  「来年は一緒に見られるかな?」  俺はその問いに、返事を打ちかけた文字を下書きにおさめ、送信ボタンは押せなかった。  「もうすぐ手術だよ」  レイからのメッセージをもらう日には、外に雪がちらつきはじめていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!