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「絶対、うまくいく」
俺はそのメッセージをもらう頃、いつもの歩道橋の上に、差し掛かっていた。レイとのやり取りは、今までの人生で最も充実した時間だったと思う。
そろそろ花火の時間か──と、空を見上げ、不意に、胸に痛みが走った。
なんだ、今かよ。
すぐにスマホを取り出し、電話をかける。
膝をつき咳き込む。降り積もる雪に、吐血が散った。
遠くでサイレンの音が響く。
そして夜空に、花火が上がりはじめた。
救急車が到着するまでのあいだ、仰向けで花火を眺める。ああ本物の花火ってのは、こんなにもキレイで美しくて、儚いものなのか。
「大丈夫ですか! 意識はありますか」
到着した救急隊員に、担架に乗せられる。
「なあ、病院を指定したいんだ」
「なにをいってるんですか。一刻を争う状態ですよ」
「頼むよ。往診履歴がある。担当の医者がいるんだ」
運び込まれた病院は、俺がずっと通院していた総合病院だ。そしてそこは、レイが手術を受けるといっていた病院でもあった。
担架で運び込まれ、担当の先生と対面する。
といっても、俺は寝かされたままだが。
「お前か。治療を諦めて在宅で余生を過ごすと聞いたが、なんだぁ? 気が変わったか?」
口は悪いが子供の頃からの付き合いで、腕は確かな医者だ。
「ああ、やっぱり手術を受けさせてもらおうと思ってさ」
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