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「ぶっちゃけ、もう二度とこっちに戻ってこないんじゃないかって思ってたから、先週、連絡もらった時はびっくりしたよ」
「私、そんなに薄情に見える?」
「10年も戻ってこなかったんだから当たり前でしょ。……っていうのは冗談だけど正直、帰りづらいんじゃないかって思ってた。あんた、昔からいろいろと考えすぎるし」
「……」
「なんで戻ってきたの?」
一瞬、責められたのかと思い、姉の顔色を伺うが、横顔はどことなくすっきりしたような不思議な表情だった。
「行かなきゃって思ってた。行きたいとも、思ってた。信じてくれないかもしれないけど。でも気づいたら、こうなってて。それで、お姉ちゃんに連絡した」
「何それ。要するに何も考えずに衝動的に動いたってこと?」
「そんなところかな」
「あんたらしくないね」
らしくない。自分でもそう思う。
「お姉ちゃんは、その……お父さんが死んじゃって悲しかった?」
「まあね。今でも悲しいよ。ああ、もういないんだなーって」
家族の中で、誰よりも父とぶつかった姉は、父の死を誰よりも素直に悲しんでいた。
「愛香。あんまり自分のことを責めないでよね。少なくとも私とお母さんはあんたのこと、責めてないから」
姉の言葉はさっきよりも深く、優しかった。
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