私と、彼らの話

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「元気にしてた?」  霊園の入り口には母だけがいた。10年ぶりに見る母にはシワと白髪が増えていた。 「元気だったよ」 「それなら良かった」 「これ、お土産」 「あら。私の好きなおまんじゅうじゃない。ありがとう」  他愛もない話に、10年ぶりの再会とは思えないような自然な会話も、今の私には夢の中にいるように思えた。 「お母さん、私、旦那と子どもたちの様子見てくるね。下の子がそろそろぐずってるかも。なんかあったら、すぐに連絡ちょうだい」 「はいはい、分かりましたよ」 「あと愛香」 「何?」 「帰ってきてくれて、ありがとうね」  去り際に私に声をかけ、姉は颯爽と車を走らせて去っていった。
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