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②
「あ、あの。僕は……」
「アンヘルさんでしょ。村の人から聞いたよ。ここで毎晩、笛の練習をしてるって。ああ、それ!」
アンヘルの脇においてある笛を指さす。彼は笛を手に取り、カルメンに渡した。
「これは、フラウト・トラヴェルソという木製の横笛で、フルートの原型なんです。フルートより大きいでしょ」
トラヴェルソを吹こうとしたり、構えたりするカルメン。
「あの、カルメンさんてこの村の人じゃないですよね。僕は郵便配達人をしているのでわかります」
「ああ、あたし? そう昨日この村に来たの。ここは、有名な修道院がある観光名所でしょ。あたしは大道芸人で、大きな街に行く途中なんだけど、その修道院に立ち寄ってみたくなってね。さっき村のバルで飲んでたら、この丘から笛の音がするじゃない。村人に聞いたらあなたの事を教えてくれたの。物悲しいけどホッとするような音に惹かれて来てみたの」
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