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③
「僕の笛の音に惹かれるなんて……。僕はまだまだ練習中の身で」
「ご謙遜。もう一つはね。この丘にあるブランコの支柱が目に入ってね。私の芸の練習に使えると思ったの」
立ち上がり、丘の真ん中にあるブランコの支柱に近づく。
「カルメンさん、ブランコは壊れて、修理中なんです。あるのは、この支柱だけですよ」
アンヘルも、近づいて支柱をコンコンと叩く。
「あたしの芸は、エアリアルフープって言うの。この支柱に太さ25mm、直径1mほどの金属製のフープ(輪)をロープで吊るして、そのフープを使ってパフォーマンスをするんだ。輪っかの空中ブランコみたいな感じかな」
「へえー。初めて聞きました。エアリアルフープかあ。見て見たいなあ」
「この支柱を貸してもらえるなら、ここで練習ができるんだけど、どうかな?」
カルメンは、斜めの支柱に体を絡めて、アンヘルを見つめる。
「ブランコの修理は、しばらくかかると思うので、貸してもらえると思います。僕から、ここの管理人にお願いしてみます」
「そお! ありがとう。アンヘル。本番前に試しておきたい技もあるんだ」
カルメンが、長身のアンヘルに抱きつく。
「練習は夜するから、明日から来ていい?」
下から見上げるカルメン。
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