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④
「朝一番で、管理人にお願いしに行きます」
「ありがとう! アンヘルもここで笛の練習をするよね?」
「はい。実は僕、村の楽団にも入ってるので……。今までは、フルート担当だったんです。それが、団長がどこからか古楽器のフラウト・トラヴェルソを見つけて来て。これのほうが、お前に似合ってるなんて言われて」
「ははあ、それでフルートから楽器が変わって苦労しているってわけ」
「そうなんです。トラヴェルソはフルートの原型みたいなものですけど、運指(楽器を演奏する際のゆびづかい)とかが違ったりするんです」
「じゃあ、アンヘルはトラヴェルソをしっかり練習してよ。あたしは、その演奏でパフォーマンスを練習させてもらうから。ああ、何かワクワクして来た。でも、この支柱を使用する許可がおりなかったら……」
「どこかほかの場所を探しますか?」
「いいや。アンヘルの練習をずっと見てる」
「そうですか……。それはご自由に。僕は、今からまた練習をして帰ります」
「じゃあ、あたしはアンヘルの奏でる曲を聞いてるよ」
「あの、失礼とは思うけど、カルメンさん何才?」
「おっと、それを聞くのね。あははは、いいよ別に。あたしは30才だよ。アンヘルはいくつなの」
「僕は、22才です」
「そっか、若いね」
カルメンこそ30才にしては、しなやかな体つきで、若く見える。
小一時間練習をして、アンヘルは自宅へ、カルメンは安宿に帰った。
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