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⑥
日が暮れると、トラヴェルソのケースを持って丘に登った。
今夜も風が吹いている。
アンヘルが、トラヴェルソの準備を終えた時、
「オラ、お若い人!」
カルメンだ。昨日と同じ服。
「オラ、カルメンさん。ブランコの支柱を使ってもいいそうです。芸の練習ができますよ!」
「ありがとう、優しい天使さん。実は、もう道具をもってきたんだ」
肩にかけていた大きな帆布のバッグを下す。そこから、フラフープのような金属のリングを取り出した。
「これが、私の商売道具。今からブランコの支柱に取り付けるから、手伝ってもらえるかな」
「ええ、もちろん」
ブランコの支柱の真ん中あたりにフープがつるされた。輪の下部が、カルメンの胸の辺りの高さだ。
「本当はね、もっと高い所にフープをつるすんだけど、徐々にね。高くするよ。じゃあ、やってみるから見てて」
カルメンは、背伸びをして目をつぶり深呼吸をした。そしてにゆっくりと、左右の手を羽ばたくようにフープの上方に持って行く。フープの2か所をしっかりつかんで回転する。体が美しい曲線を描いて優雅に回る。回転は速くなり、カルメンは足を引き付けてフープに掛ける。そのままフープをまたぐと右足を真横に伸ばし左足は胸に引き付け体を反らせた。
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