0人が本棚に入れています
本棚に追加
「いざ、勝負」
「おお」
式神が素早く私を取り囲む。私は目の前の式神に迫ると、鋭く伸びた爪を振り下ろす。
バチッ。
火花が飛ぶ。式神に結界を張っているのか。
蹴りつけようとすると、その足に別の式神が取り付く。振り払おうとすると、もう片方の足にも取り付いている。
足は放っておいて、両手を目の前の式神に振り下ろす。
バチバチバチッ。バチバチバチッ。
繰り返すと結界に綻びが見えた。爪でこじ開けるように右腕を差し込んだ。
式神の姿が揺らぎ、カサリと破れた紙となって、地面に落ちた。
「うっ」
雪平がうめき声を上げた。式が破れた反動か。
しかし、後ろから羽交締めされてしまった。もう一体の式神が後ろに回っているのは気づいていた。
雪平がすぐそばまで近づいてきた。
このために羽交締めを許したのだ。
ただ、近くで見ても確信が持てない。
私は強引に腕を前に回した。ゴキリと音がして、肩が外れる。式神ごと、腕を雪平の首にかけた。
「何をする」
油断するんじゃない。私は引き寄せた雪平の頭を抱え込み、そっと、首筋に牙を立てた。甘い血の匂いにクラクラする。
最初のコメントを投稿しよう!