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二人になった帰り道、透太は両手を頭の後ろに回して空を見上げた。夏の空は昨日よりも色が濃くなって、夏の訪れを予感させている。
「わかんないなぁ。あんなお化けと一緒に暮らすなんて、僕には考えられないよ」
「そうだね」
宮岡は小さく微笑んだ。
「透太も大事な人ができたら、きっと理解できる日が来るよ。たとえどんな姿になったって、もう一度会いたい。一緒にいたい。そう思う気持ちがね」
透太は兄を振り返ると、無垢な目で首を傾げた。
「兄ちゃんは、僕が怪物になってもそう思ってくれる?」
「……ああ。もちろんだ。透太がどんな姿になったって、ずっとずっと大好きだよ」
宮岡が答えると、透太はぷいと顔を背けた。柔らかい髪の毛の下で、耳たぶが真っ赤に染まっている。宮岡は「ははは」と声を上げて笑い、弟の肩に腕を回した。
「コンビニでも寄ろうか。アイス買って帰ろう」
「うん!」
まだ熱を帯びたアスファルトに、兄弟の影が長く伸びていた。
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