怪異対策相談室のお仕事 ~白い犬の話~

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***  宮岡は驚いてオムライスの皿から顔を上げた。弟の透太はスプーンを置き、窺うように上目遣いで彼を見ている。 「香世ちゃんって確か、最近透太がずっと気にしていた子だよね?」 「うん……」  透太は小学六年生。宮岡とは十歳以上歳が離れているけれど、幼いながらも正直なしっかり者であり、簡単に嘘を吐いたりはしない子だった。だからこそ、宮岡は耳を疑ったのだ。 「香世ちゃんの家のわんちゃんは、半年前に死んじゃったんだろう。それが生き返ったって言うのかい?」 「だって、香世ちゃんがそう言ってたんだもん」  死んだ生き物が戻ってくることなんてありえない。そんなことを今更言い含める必要はないだろう。  宮岡は困惑した顔で眉を吊り上げ、居心地悪そうに身を捩る弟を見つめた。  佐々木香世は透太と同じクラスの女の子だ。クラブ活動が同じだとかで仲がいいらしく、度々透太の話に出てくる。冬に可愛がっていた愛犬を亡くし、ずっと塞ぎ込んでいた。  それが、ある日を境に突然元気を取り戻したのだという。理由を訊ねると、香世は嬉々としてこう答えた。 「リクが戻ってきてくれたの!」  それから香世はリクとの毎日を楽しげに語るようになったが、しかし、写真を見せてくれと言っても見せてくれない。何かが以前と違っておかしいのだという。 「それになんだか、最近香世ちゃんからヘンな臭いがするんだ。排水溝の臭いって言うのかな……時々ベタベタしたのが髪の毛に付いてるし」 「ふぅむ」  宮岡は考え込んだ。  市役所を通じて正式な要請があった訳ではないけれど、確かに透太の言うことには引っ掛かる。宮岡の過去の経験が、これは怪異事件だと告げていた。 「兄ちゃん……来てくれる?」 「わかった。明日、香世ちゃんに会いに行ってみよう」
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