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コンビニを出たところで、ふと視線を感じて振り返った。
真っ暗な駐車場の一角。そこには街灯がひとつあって、アスファルトの地面を朧気に照らしていた。
リクが死んでから、その街灯のことは意識して見ないようにしていたのだった。散歩の途中で買い物に寄る間、リクをそこに繋いでおくのが習慣になっていたから。リクはコンビニから出てきたわたしを見ると立ち上がり、嬉しそうに尻尾を振って迎えてくれた。あの街灯を見ると、そんないつもの光景を思い出してしまう。
白いラブラドール・レトリバーのリク。
たった六歳でこの世を去ってしまったリク。
もう二度と会えないとわかっているのに、ずっとわたしの心の真ん中に居座って、あの頃と同じ笑顔で尻尾を振ってくれている。わたしはあの子のことが忘れられず、毎日を泣いて過ごしている。
本当は、このコンビニに来ることすらつらいのに。
今日に限って、わたしはあの街灯を振り返った。
そこに、リクがいた。
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