第八話 運命の分かれ目➁

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第八話 運命の分かれ目➁

 目の前の女性、アピロはぱちぱちと乾いた音と立てながら拍手を送っている。  そして目の前にいる私は言葉を理解できずに考えが追い付いつかない。 「あの、どういうことですか……?」 「言葉の通りだけれど?」 「えっとそのあの、全然頭が追い付いてないんですけど私が何の権利を得たんでしょうか?」 「聞こえてなかったかしら?入学権を得たのよあなた」 「入学権?」 「そうよ」 「何のですか?」 「学園よ」 「何の学園ですか?」 「魔法よ」  整理しよう。  私は権利を得たらし。その権利は学園への入学権だそうだ。  そしてその学園は魔法の学園らしい。  つまり 「私が魔法の学校への入学権利を得たって事ですか?」 「ええ、そうよ」 「あ~、なるほど!そういうこ……えええええええ!?!?」  理解して思わず声を荒げてしまう。  言葉の意味は理解できた。だがその言葉が突然語られた意味が理解できない。 「びっくりするほど喜んでくれるとは思わなかったわ。ではとりあえず細かい説明を」 「ちょーーーーっとまってください!理解が全然追いついてないです!!」 「まだ理解できてないの?だから貴女は入学の」 「言葉の意味は理解できました!でもなんでその権利を得ているのが全然理解できてません!!」  思わず強い口調で声を荒げてしまう。  同時に、そんな声を上げてしまった自分に気づいて、混乱していた私は我に返る。 「すいません、突然大きな声を出しちゃって……」 「大丈夫よ気にしないで。私も話を少し急かしすぎたわ」  アピロは怒るわけで戸惑うわけでもなく、ニコニコと屈託のない笑みを浮かべながら私にそう微笑みかけた。  それから暫しの静寂の時間が流れる。  寂れた部屋に満ちるひやりとした夜の冷たい空気を感じながら私は混乱していた頭を落ち着かせていく。  一方目の前に座る女性はねじの切れた人形の様にその身を動かさず目を伏せてたまま会話の再会を待っている様子だ。  だいぶ落ち着きを取り戻した私は最後に一つ大きく深呼吸をし、目の前の訪問者へ声かけた。 「えっと、いろいろ理解が出来ていないんですけど、幾つか質問していいでしょうか・・・?」 「ええ、どうぞ」  先程と同じ様に屈託のない笑みを浮かべてそう返す。 「あの、どうして私が魔法学園の入学権利を持っているのでしょうか?」 「貴方が入学できる様に準備をして置いたからよ」 「何で私が入学できる様に準備を・・・?」 「頼まれたからよ」 「えっと、誰に?」 「貴女の母親よ」 「あ~、なるほど!そういうこ……えええええええ!?!?」 「さっきといい元気の良い声ね。それだけ元気なら学園でもやって行けそうだわ」 「いやそのえっと、お母さんが私を、魔法の、学校に?」 「ええ、以前最後に会った時にお願いされたのよ。貴女が学園に入学出来る歳になったら面倒を見てほしいって」 「わたし、そんな話し一言も聞いた覚えがないんですけど」 「それはそうよ。だって私が今初めて貴女に伝えたんですもの!  貴女の母から聞いてたのよ、お母さんと同じ魔法使いになるんだって言ってた事。  だからこの事についてはあなたがこの歳になるまでは伏せておいてサプライズにしようと思ったの」  先程よりも一層ニッコリとした、いや満面の笑みを浮かべながら、嬉しそうに女性はそう言葉を口にする。  私はその光景を見ながら相も変わらず上手く状況を把握できず、唖然とする以外に他はなかった。母の友人を名乗る目の前の人物から一方的に吐き出される未知の情報の数々にただ思考が打ちのめされるだけである。  そんな私の姿に気づいたのか、アピロは小さく咳払いをすると私の方へ改めて向き直った。 「ごめんなさい、私だけ勝手に盛り上がってしまって。  実際のところは入学できるかどうかはその当時はわからなかったの。  だからがっかりさせてしまうのも忍びないし入れるかどうかわかるまでは知らせるのは控えてたの」 「そうなんですか……」  半分上の空で相槌を返すが、もはや私の考えは魔法がどうとか入学だとかそういう事よりも最優先で疑問となってしまっている事があった。  それは 「あの……貴方は何者なんですか」 「私?私はさっき自己紹介した通りよ。  私の名前はアピロ、アピロ・ウンエントリヒ、貴女の母親の友人。そして」  そう呟きながら彼女は私に差し出すように手を向けると  ぼうっと  小さな木屑が燃えるかのような音と共に、何もなかった手のひらに突然小さな火の玉が現し、こう口にした。 「貴女の母親と同じ魔法使いよ」
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