綺麗な海

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 見晴台から降りると、すぐに分かれ道がある。この町から遠ざかるための道と、町の住宅街に戻る道。このまま君が港まで駆けてしまわないように、わざと右側の道を塞ぐように立ち止まった。  すると君はやや怪訝そうな顔でこちらを振り替える。びくり、と体が跳ねる。  しかし私が想定したことは杞憂だったようで、君は私が不自然な動きをしたことに対して首をかしげた後、家へ戻る元通学路を、革手袋越しに指差した。  「じゃあ、そろそろ帰ろう。今日は家で軽い門出を祝うパーティーを開くんだ。友達も沢山呼んである。とーぜん、あなたも来てくれるよね?」 「…………行く」  私は君の背中を眺めるように歩いた。このままだと恐らく、君が見晴台から遠ざかるようにこの道を歩くのは最後になる。そうなるのは実に名残惜しく、私は右側の道を全身で封鎖したのを少し後悔した。あちらの道を通ってほしくないのだけれど、かといってこの道を通ることが今日で最後になる通るのもやめてほしい。  どうにもならない矛盾、つまるところは身勝手なジレンマ。  サクサクと新雪に道標を刻んでいく。時折振り替える。この時代でもまだ淡く汚れなき彩りを残している星が綺麗だった。  嫌な予感がする。そういう精神的な頭痛が辛い。けれど君は振り返らないから、そのことは気付かれることはなかった。
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