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竹藪から見える故郷がとても遠くに感じる。
あなたを追いかけこの地に来たが、
草陰からあなたを見て、僕はそっと背を向けた。
罰としてこの地に送られたあなたは、
優しそうな老夫婦と共に生き、
新しい幸せを手に入れていた。
僕はこの地を訪れて、
酷い目にしか遭っていなかったから、
きっとあなたも辛い思いをしていると。
僕のその考えは勘違いだったようだ。
僕の心配なんて要らなかったようだ。
僕を抱いて微笑んだあなた。
お餅が好きだったあなた。
僕がついたお餅が一番おいしいって。
僕はそれがとても嬉しかった。
僕らの幸せが、あの頃にはあった。
あなたがいないと生きていけない、
そう思ったのは僕だけだった。
悲しいけど、寂しいけど、
あなたが幸せなら、僕はそれでいいんだ。
そこに僕がいなくても。
竹藪の向こうに見える故郷を眺める。
僕はこれからどう生きよう。
わからない。わからないけど、
さいごにこれだけ届けよう。
夜空に輝く星に、叶わぬ僕の願いを。
「あの頃の、あなたに会いたい」
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