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カバンを持つのが嫌で何でも洋服のポケットに入れていた。
夏はデニムに。
寒くなったらジャケットに。
パンパンに膨らんだポケットにさらに手を入れて歩くのが癖だった。
君はいつもそんな僕のポケットに無理矢理手を入れてきて、手を繋いだ。
ものが多すぎて、君の手が半分しか入らないこともあった。
ポケットの中に入れたはずだと思っていたものが無いことはしょっちゅうだった。
落としたり、家に置いたままだったり。
その度に君は一緒に探してくれた。
いつも不思議とちゃんと見つかっていた。
だから油断していたんだ。
『大事なものは失わないように意識しておかないとね』
何度も君に言われたのに。
何度も。
何度も。
僕はカバンを持つようになったよ。
落としものも忘れものもしなくなった。
ポケットにものを入れなくなったから、2人分の手は余裕で入るのに。
いまだに君だけが見つからない。
君だけが。
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